アーカイブ化
読了:深川黄表紙掛取り帖
読了:道三堀のさくら
江戸の街は開かれた当初から水道があった。というのはなかなかすごいことだとずっと思っていた。でもそこは江戸時代の事で、どこにでも水道が引かれていたわけではないのだな。
江戸の水道は武蔵野から引かれていた。要するに西の方から東に向かって引かれていたのだ。そして、東の果てが大川(隅田川)ということになる。当時の自然流下の水道では大きな川を越えるのは無理だったのだ。
そこで、大川の東側は水売りが水舟を使って配水事業をした。この小説の主人公はこの水売りだ。
山本一力は江戸の町を成り立たせていた商売にスポットを当てて小説を書く人だが、なかでも水売りに目をつけるなんてさすがだと思う。
ただ運ぶだけの水売りが美味い水造りを始めるまでの成功物語、と言ってしまうとちょっと違う。人の心が変わってしまうことによる挫折、悲しみ、苦しみ、それを乗り越えて大きくなって行くであろう男が主人公。多少終わりが中途半端と感じる人もいるかもしれないが、そこはあえてそこで余韻を残したというほうが正しいだろう。
うまくいくときがあればそうでないときもある。そういう人生を綴って心に残る作品だと思う。

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読了:銀しゃり
登場人物が暖かくて、最初から最後まで安心して読める。
職人を主人公とした時代小説ってあるようでそれほどないかもしれないな。しかも頑固一徹損得を考えないみたいな職人の話はありそうだけど、商売を成功させる職人というのはそんなに描かれていないと思う。
財政赤字の果ての棄捐令。開き直る債務者。金詰まりによる不景気。この物語を書いた背景には前のバブル崩壊があったのだろう。細かい原価を考え、工夫を重ね、仕入先と交渉し、さらに相手のビジネスまで考えてさらに大きなビジネスにする。そういうことを地道にやっていく人々によって景気は回復するのだという思いが伝わってくる。
今まで読んだ山本一力作品の中では一番好きかもしれない。
柿鮨、食べてみたいな。
銀しゃり[文庫] (小学館文庫)
山本 一力
![銀しゃり[文庫] (小学館文庫)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/41TGKpa8qxL._SL160_.jpg)
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読了:峠越え
この人の描く江戸の人々は優しいとつくづく思う。
暖かく見守るというような優しさではなく、時には敵と思えるような厳しさで鍛える。見込んだ者を本物に育て上げようとする人々の目。「だいこん (光文社文庫)」と同じように、厳しさに真摯に立ち向かってひとかどの者になっていく主人公を軸に、周囲の本当の優しさを持つ人々を描くのが作者は好きなのだ。
相変わらずここに必要なのかと疑問に思う冗長で説明的な江戸の風物の描写が気になるし、最後には主人公が誰なのか解らなくなる欠点はあるように感じるが、主人公が自分の才覚でトントン拍子に成功していく物語はとても楽しい。
なんだか都合が良すぎるストーリーではあるが、時代物はファンタジーなのだからそれでいいのだ。
平日の空き時間に読みつづけて二日で読んでしまった。
峠越え (PHP文庫 や 40-1) (PHP文庫 や 40-1)
山本 一力

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読了:だいこん
下町人情モノ。いわゆる細腕繁盛記ってやつ。
山本一力の作品は「あかね空」がなにかの賞をもらって一気にメジャーになったときにいくつか読んだ。内容はどれも好きなのだが、残念なことにどれもちょっと冗長というか、テーマに対して書きたいエピソードが多すぎるのか全体に雑然としたイメージがあるところが疵だ。この作品も、回想と現在進行がわかりにくく入り組んでいるし、人物が伏線的に出てきてもそれが最終的には放置された感じになったりしてどうもすわりが良くないのだ。結果、最後の終わり方が中途半端な感じになった。
とはいえ、主人公のつばきがその卓抜した感覚で成功していく姿を追いかけるのはとても楽しい。次はどうなるかとワクワクしてどんどん読み進んでしまう。周りで見守る人々の暖かい下町の風土は一種の理想郷だ。こんな時代に生きたかったと考えてしまうくらいだ。
山本一力の作品に出てくる人物は誰もがどこか素直なところを持ち合わせている。それはそのまま彼の人間観を表しているのだろう。それは池波正太郎の描く世界にどこか似ている。
それにしても、だれもが虜になってしまうつばきの炊くご飯。なんとかして食べてみたいと思うのは読者の共通の思いだろうな。



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